ミラージュ小話あれこれ |
カテゴリ
以前の記事
2014年 05月 2013年 07月 2012年 07月 2011年 05月 2010年 05月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2006年 07月 2006年 05月 2005年 05月 2005年 04月 2004年 11月 2004年 10月 フォロー中のブログ
お題
[30*WORDS]
http://mine.chips.jp/30w.html |
「なんでゴミなんだよ」
リビングのソファで高耶が素っ頓狂な声をあげる。 「え?何か言いましたか高耶さん」 キッチンから淹れ立ての珈琲を持って来た直江は、マグカップを手渡しながら 訝しげな顔つきになる。 「いいか直江、よく聞けよ」 「・・・はい?」 何が何だか分からない―。 直江は多少の混乱を感じつつも、高耶の隣に大人しく座ることにした。 「だからさ、憲法記念日なんだよ。博多どんた君なんだよ」 「・・・それを言うなら『博多どんたく』では・・・」 「王貞治が4打席連続本塁打なんだよ」 「あー、その試合の中継はりアルタイムで観たような。阪神戦でしたよね」 「『花とゆめ』の創刊だろ?極東軍事裁判だろ?」 指を折りながら関連性のない出来事を一つずつ挙げているようだ。 「少女雑誌と戦後処理の裁判を同列にする辺りが高耶さんらしいですね」 「それとマキャべリにリカちゃんに相原コージ」 「『君主論』に『コージ苑』ですか・・・?」 「あ、お前コージ苑読んでたのか。このムッツリ」 「は・・・?」 「あとはだなあ、死んだ日なら苦情かねがねとか鷹山公とか池波正太郎とか」 「『玉葉』の九条兼実ですか?それに治憲公?ああ、『鬼平犯科帳』は好きですねえ」 「俺は『藤枝梅安』だなー」 「好きそうですもんねえ、仕掛人」 「針で刺すのがカッコイイんだよ・・・って話がそれてるぞ」 「・・・何の話をなされてたんですか」 少し頬を膨らませた様子で、高耶は直江の方に身体ごと向き直る。 一方こうした顔を見ると、まだ青年らしさを残していると感じてしまう直江である。 「ゴミの日なんだよ。5月3日だから『ゴミ』」 「まあそうでしょうねえ」 直江は長い指を顎の下にあてるポーズを取って賛同する。 「何関心してんだよ。この考え方で行くと6日はゴムの日で29日はこんにゃくだ」 「ははあ、ちょっとした駄洒落ですか」 「ダジャレってお前。最近その単語もなかなか聞かないけど」 「で、高耶さんは何を私に話したいんです?」 手にしていた珈琲カップを机に置くと、直江は高耶の目を真っ直ぐ見つめる。 「あー。・・・お前の誕生日の話を持ち出すと皆揃って『ゴミの日』って言うもんだから」 「・・・だから?」 バリトンを更に低くした重低音。 こういう声を出すときの直江はたちが悪い、と高耶は思った。 「なんでもないっ!とりあえず『誕生日おめでとう』とでも言っておけばいいだろ」 「ええ、その祝辞はありがたく頂きますよ・・・ありがとうございます」 「ならそれで満足してろ」 「はい」 直江は少しだけ何かを逡巡したようだったが、高耶の照れた横顔を見て 満足することにしたのだった。
by higame
| 2006-05-03 21:42
| SS
|
最新のトラックバック
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||