ミラージュ小話あれこれ


お題だったり突発だったり。
by higame
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
お題

義明さんおめでとう

「あっちぃ!5月だってのに何でこんなに暑いんだよ」
高耶は脚を投げ出すと、畳にごろりと寝転んだ。
「毎年ゴールデンウイークの時期は暑くなる気がしますね」
「あー、そっか、世の中ゴールデンウイークか。ん?もしかして今日って……」
「ええ、5月3日は橘義明がこの世に生を受けた日です」
少し困ったような顔で直江が答えると、高耶もつられたように苦笑した。

「お前が生まれ直した日に、感謝しないとな」
「おや、祝ってくれるんですか?」
「俺としては、お前の誕生日に便乗して美味いもんが食いたい」
「なるほど、高耶さんは策士ですねえ」
一頻り笑って、高耶は直江に向き直った。
「そういやお前んちって、姉兄弟皆いい名前だよな」
「そうですか?高耶さんと美弥さんも素敵な名前だと思いますが」
「お前から初めて橘義明って名前聞いたとき、出来過ぎっていうか名前で宿体選んでるのかよって思ったくらいだぜ?」
「まあ、確かに良い名だと思います。字面が誠実そうでしょう?」
「お前がそれを言うのかよ」
「冗談はさておき、やはり寺の息子ですからね。字面も音読みしたときの語感も考えられているんでしょう。名前とは正反対に、随分迷惑もかけました」
「でもいい家族だよな。お前んちの人たちって何か大らかで器がデカいって気がするし。前にお前の兄さんに電話で捕まった時は困ったけど」
「高耶さんが可愛かったからでしょう」
「お前なあ、いちいちそういう言い方するなよ」
「おや。兄にも言われませんでしたか?」
「……言われた。あと、ちょっとだけ似てた」
「氏照殿に、ですか」

黙って頷く高耶に、直江は視線を合わせて向き合った。

「貴方のことを諦めずに居られたのは、今の家族の力が大きかったと思います。だから、貴方が橘義明の体に思い入れを持ってくれるのがとても嬉しい」
「直江……」
「さて、そろそろ日も暮れてきましたし夕飯は奮発しましょう」
「えっ、まじ?」
「貴方が美味しそうに食事をする姿を、私に見せてくれるならばそれが何よりのプレゼントですから」
「相変わらず口の達者なやつ。仕方ねぇな、その口車に乗ってやるよ」

高耶は、ただしGパンとTシャツで行ける店にしてくれよと念を押すと、伸びをしてから立ち上がった。

「直江、誕生日おめでとう」

お前も少しはラフな格好しろよ、と照れ隠しの捨て台詞を残して部屋を出て行く高耶の後ろを、嬉しそうに追い掛ける直江だった。
[PR]
# by higame | 2014-05-03 23:11 | SS

高耶さんおめでとうあれこれ

「高耶さんお誕生日おめでとうございます」

高耶が玄関を開けてまず目に入ったのは、自分の頭より一回り以上大きな西瓜だった。

「直江?」
「今日も暑いですね。高耶さんの誕生日はいつも大暑らしい暑さでいっそ清々しい」
「お前また栃木から車飛ばして来たのかよ」
「誕生日祝いの前哨戦に、西瓜でもご一緒にどうかと思いまして」

いつもの黒スーツに身を包んだ直江は暑いと口にする反面、大して汗などかいていないようだった。

「お邪魔しても、いいですか」
「帰れとは言えねえだろうが」
「ありがとうございます」

部屋に上がると、直江は流石に上着を脱いでネクタイを緩めた。



「おまえ、その西瓜めちゃくちゃ高かったろ」
直江が持ってきた西瓜が「でんすけ」だと聞いて高耶は驚いた。

「そんなに高いものではありませんよ」

こいつの金銭感覚は信用ならないとばかりに高耶は睨めつけてみせる。

「未成年にドンペリを飲ませるわけにもいきませんし、ケーキを買うと子ども扱いされたと拗ねるでしょう?ああ、この時期、薔薇はすぐ萎れてしまうので朝顔の鉢を持ってきました」
「俺、すぐに枯らすぞ」

口ではそう言いつつも、優しい人だからきっと気にかけてくれるだろう。
そして朝顔を見るたびに自分のことも思い出して欲しい。
そんなささやかな願いもこめて、直江は朝顔を用意してきたのだった。

「夜は鰻でも食べに行きましょう。もちろん美弥さんも一緒に」
「あいつ鰻なんてほとんど食ったことないから喜ぶと思う。なんだか悪いな」
「あなたの誕生日ですから、素直に祝われてください。さあ、切りますから西瓜食べませんか」
「これだけでかい西瓜、切り分けなきゃうちの冷蔵庫に入らねえよ。ったく意外と考えなしだよな、おまえって」
「すみません、少し浮かれていたようです」

自然と笑みをこぼした直江の顔に、高耶は照れくさくなって顔をそらした。

「お前、料理とかしないのに結構手慣れてるんだな」
「寺の手伝いでよくやさられたんです。夏は何かと檀家さんの来ることが多いですからね。貰い物の西瓜なんかを切って出したりするんです。母には頭があがりませんよ」
「これ、あとで美弥が食べるにしても消費しきれねぇぞ」
「ああ、せっかくですから譲さんや沙織さんにも声をかけてみますか。長秀や晴家も、呼べば来ると思いますよ」
「げっ。あいつらはやめてくれ」

例年以上に騒がしくなりそうな自分の誕生日を思って、高耶は苦笑いしたのだった。

「改めて、誕生日おめでとう高耶さん」
「さっきも聞いた」
「それでもまた言いたくなったんですよ。おめでとう、高耶さん」
「ああ…サンキュ」



「高耶さん、一口味見どうですか」
 西瓜を切っていた直江が、切り口の一番甘いところを高耶に差し出して来た。
高耶が口を開けると、冷えてはいないがとても香りの良い甘味が口いっぱいに広がる。
「これすげー甘いぞ。うまい」
「高耶さんの口に合って何よりです。俺にも味見させてくれませんか」
「お前が買って来たんだから好きにし、」
 高耶が最後まで口にするより先に、直江の舌が高耶のそれを吸い上げた。
まだ口に残っていた西瓜ごと舐め取られて、高耶は直江の胸を叩いた。
「っ、おまえっ」
「うん、確かに糖度が高いですね。あなたの口からいただいたので余計に」
 しれっとした顔で唇を舐め上げる直江の脛を、高耶は思いきり蹴ってやったのだった。


■□■

高耶さんへ


今日は直接あなたにおめでとうを伝えられないので、柄にもなく手紙を書いてみました。
暑い日が続きますが、お元気ですか。
ヨーロッパでは今日から太陽とおおいぬ座が同じ方角に出るこの時期は、何かと体調を崩しやすいと言われるそうです。
暑いからといって、お腹を冷やさないようにしてくださいね。

美弥さんにもお変わりありませんか。
あなたのことだから、相変わらず譲さんや長秀にも憎まれ口を叩いているのでしょう。

どうも、口に出すのとは違って文字にするのは難しいものですね。
あなたのぶっきらぼうな顔や、時折見せてくれる優しい笑顔を思い出すと、今日という日に感謝してもしきれません。
やり直すチャンスをくれたあなたという人が、どうしようもなく愛おしい。
あなたの存在に癒され、助けられ、暖かな気持ちになれる人間がいることを忘れないでいてください。

誕生日おめでとう、高耶さん。



 「…恥ずかしいやつ」

 ちゃんと会いに来いよ、とは口には出さず高耶は財布を持って家を出た。
 直接祝ってくれないのならば、自分が会いに行くまでだ。




■□■


窓から差し込む光は、夜とは思えないほど明るい。
今夜は満月だとテレビで言っていたな、と高耶はぼんやりと思い出していた。

「…っ」

背後からの急な攻め立てに息が詰まる。
自分を後ろから抱きしめている男は、高耶の足を割って猛った熱を高耶の中に注ぎ込んできた。

「いつもより、感じてる?」

硬さを増した胸の飾りを執拗に弄りながら、直江は高耶の耳元で囁く。
その響きに直接鼓膜を犯されているような錯覚に陥りながら、高耶は逃がす場のない快感に首を振って男の胸に擦り付けた。
直江の左手は高耶の胸や脇をまさぐったまま、右手は下肢の熱を追い立ててはぎりぎりで手放す。
後ろからの律動に、高耶の腰も自然と速くなる。

「もう、無理…っ」
「駄目ですよ。今夜はいつも以上に感じて、貴方が生きていることを嫌というほど思い知って。貴方によって余りあるほどの幸福を手に入れた男の、俺の熱を受け止めて」
「月、が」

高耶も直江も全裸で月光にさらされている。
月はこの男を思わせるからいけない、と高耶は理性を無くす理由を転嫁した。

「貴方のその淫らさを月にも見せてやればいい。」
「なお、え…っ」
「高耶さん、おめでとうございます。誰よりも、貴方が生まれ直してくれたこの肉体に、仰木高耶に祝福を」



■□■

 顔に当たる朝日の眩しさと、じんわりと汗ばむ不快感で直江は目を覚ました。

 「夢、か」

 つい先ほどまで、この腕の中にあの人を抱き締めていた感覚が残っている。

 「今日はあなたの誕生日でしたね。会いに来てくださって、ありがとうございます」

 直江は上半身を起こすと自分の寝ていた隣、微かに温もりの残る布団をそっと撫でた。


 内宮の駐車場に車を停めて、直江は通いなれた参道を歩く。
 遷宮の年らしく、早い時間でも観光客は多い。
 ジリジリと照りつける陽射しに目を細めながら奥へと進む。
 観光客が足を踏み入れられない聖地まで来ると直江は足を止めた。
 青々と繁る桜の葉が、日陰を作って揺れていた。
 

 「誕生日おめでとうございます、高耶さん」

 木陰を走り抜ける風が直江の頬を撫でた。
 今日ばかりは二人きりになりたいと思っても良いだろう。
 こうして一日、気の済むまで貴方のそばに居ようか。




■□■

 その男が灼熱の風に目を開けたとき、世界は見渡す限り砂漠だった。
 いつもと変わらない風景、少しずつ沈んでいくトリイ。
 季節という概念も、暦という区切りも無い世界では今がいつなのか分かる術もない。
 だがほんの少し熱を増した風の、鱗に覆われた肌を焼く痛みが男を動かしたのかもしれない。
 かつてイセと呼ばれた廃墟に向かって呟く。

 「オ、メ、デ、ト、ウ」

 そのとうに消滅した言葉が何故だか懐かしく思えて男は少しだけ笑った。
 硬い皮膚の顔は表情筋も退化してしまったが、微かに口の端は上がったようだった。

 「オウギ、タカヤ」

 声を発するたびに喉が焼かれるようだった。
 それでも男は満たされた気持ちで、無意識に持ち上げた左手首の内側にそっと口を押し付けた。

 閉じた瞼の奥で、誰かの笑顔が見えた気がした。








高耶さんHappy Birthday!!

補足:体位の名称は「窓の月」
[PR]
# by higame | 2013-07-23 21:20 | SS

おめでとう②

コンコン、と控え目だがそれで居てはっきりと聞こえるノック音に高耶は目を覚ました。
正しくは待っていた、と言うべきだろうか。
腕時計に目をやると、あと30分ほどで日付の変わる時間だった。

ベッドから身を起こすと、高耶は静かにドアを開けた。
そこには、待ちわびた男の姿。

「何とか貴方の誕生日に間に合いましたね」

するりと身体を部屋に滑り込ませて、直江は後ろ手に鍵を閉めた。

「思った以上に作戦が難航したもので・・・こんな時間では花屋もケーキ屋も開いてなくて」

直江は珍しく乱れた髪を片手で撫で付けて高耶に真っ直ぐ向き直った。

「誕生日おめでとうございます、高耶さん」

直江に抱きこまれた姿勢で、高耶は「ああ」とだけ呟いて自分の腕を相手の背に回した。
温かい。
むしろ暑い、というべきなのだろうが直江の体温に安心感を覚えて高耶は暫し目を閉じた。


「高耶さん、大したものじゃなくて申し訳ないのですが貰って頂けますか」

解いた腕を高耶の腰に回し、直江はコンビニの袋と向日葵を持ち上げてみせた。

「薔薇は手に入らなかったので、自生していた向日葵とコンビニのケーキしかありませんが」
「コンビニのケーキで十分だ。こんな時間だしな、ホールじゃ胃にもたれる」
「俺も腹が減っているので、今日は一緒に食べさせてもらいます。こうして見ると、向日葵も貴方によく似合いますね」

直江は高耶を椅子に座らせると、簡易テーブルにケーキとフォークを並べて
「ろうそくを忘れてしまいました」
と笑ってみせた。

「直江」

高耶は直江を見上げて、薄く唇を開けた。

「高耶さん」

そのまま直江も自分の唇を重ねると、すぐさま舌を差し込んで互いに貪り合う。

ケーキも花も嬉しかったけれど、一番待ち焦がれていたのはこの男自身なのだ。
高耶はシャツの中に忍び込んで来る手を何とか押しとどめると、「ケーキを食べてからな」と情欲の笑みを浮かべたのだった。
[PR]
# by higame | 2012-07-23 19:32 | SS


最新のトラックバック
鬼平犯科帳 DVD-BO..
from 鬼平犯科帳 DVD-BOX ..
時代劇「仕掛人・藤枝梅安」
from 全ての未確定に火を放て
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧